社労士事務所の同一労働同一賃金コンサルティングの取組状況
同一労働同一賃金が、2021年4月から中小企業でも適用の対象になります。
中小企業を中心にお付き合いされている社会保険労務士の先生方につきましては、同一労働同一賃金対応のご提案をどのように進めていくか迷っている方もいるのではないのでしょうか?
今回は、「社労士事務所の同一労働同一賃金コンサルティングの取組状況」と題しまして、
・同一労働同一賃金に対する中小企業の認識
・社労士事務所の取り組み状況
・同一労働同一賃金コンサルティングに向けた3つのステップ
こちらを解説していきます。
1 同一労働同一賃金に対する中小企業の関心状況
2020年9月に社労士事務所経営研究会の約200会員様にアンケートをした結果
中小企業の経営者様の同一労働同一賃金に関心をもつ理由として
1位:法対応をする必要があるから(93%)
2位:未対応リスク回避のため(65%)
という意見が最も多い回答でした。
※有効回答43事務所
大企業では、正社員と非正規社員と待遇差によって裁判になった事例もあり、
法律への対応という点から経営者から非常に注目を集めています。
実際に、8割以上の社労士事務所では、同一労働同一賃金に関する
問い合わせが発生しており、施行が近づくにつれてこれからもニーズが高まっていきます。
中小企業の経営者様が関心を示さない理由としては、
「コロナ禍でそれどころではないから」
「重要性を理解していないから」
という声が挙げられました。
※有効回答43事務所
現在は、同一労働同一賃金に関心がないと回答している経営者様も、
その重要性を理解したタイミングで、ニーズが生まれる可能性は非常に高いと思われます。
2 社労士事務所の取り組み状況
2020年9月に社労士事務所経営研究会の約200会員様にアンケートをした結果事務所内で来年の法改正に向けて対応できる提案の準備が整っていると回答した事務所は、わずか16.7%でした。
また、準備ができていると回答した事務所のなかでも、具体的な料金やサポート内容まで確定していると回答した事務所は1事務所のみでした。
※有効回答43事務所
一方で、新規見込み客へも同一労働同一労働を提案していきたいと回答した事務所は85%で、多くの事務所が同一労働同一賃金を「売上増加」「顧問先数増加」のビジネスチャンスととらえていることが分かります。
さらに、既存顧問先へ同一労働同一賃金を提案していきたいと回答した事務所は、90.5%で、中でも、5割近くの事務所が有償対応で行うと回答しています。
※有効回答40事務所
新規顧客獲得はもちろん、顧問先に対する同一労働同一賃金コンサルティングの導入でも売上の向上が見込めるということになります。
この同一労働同一賃金の時流は、社労士事務所にとって大きなビジネスチャンスと言えますが、課題は、社労士の先生方の準備が追い付いていないというところにあります。
つまり、早期に準備を進めることができれば、同一労働同一賃金の相談を「総どり」できる可能性があります。
まだ、準備ができていない先生は、この先行者メリットを得る為にも、今すぐ同一労働同一賃金のご提案の準備を始めましょう!
3 同一労働同一賃金コンサルティングの3ステップ
①コンサルティング手順を決める
同一労働同一賃金対応は、同一労働同一賃金診断・改善策の提案・各種規定の改定サポートの順で行います。
ⅰ同一労働同一賃金診断
お客様の雇用形態・賃金格差の整理、格差の合理性判断の支援等を行います。
まずは、お客様の現状の雇用形態や均衡待遇・均等待遇の該当者等を確認し、待遇差の有無を判断します。合理的な待遇差がある場合は、それを明文化し、説明義務に対応します。
ⅱ改善策の提案
格差是正策の検討・提案、改善後の人件費シミュレーション、格差是正策の採取決定等を行います。
是正が必要な待遇に関してはその待遇の性質や目的を考慮し、今後の対応方針を定め、待遇改善に向けた資金調達についても検討します。
また、上記で定めた対応方針について、労働組合あるいは、従業員の過半数を代表する従業員と話し合い、合意を得る必要があります。
※個別の待遇のみではなく、賃金全体を見直す必要がある場合の改善策提案の流れ
ⅲ各種規定の改定サポート
就業規則・労働条件通知書等の改定、賃金説明用の資料の作成のサポートを行います。
各種規定を改定し、従業員に対する制度の周知を行うための資料を作成します。具体的には、
・雇入時に使用する労働条件通知書、賃金規定、就業規則には、賃金・教育訓練・福利厚生等の待遇を明記
・非正規雇用労働者から求められた場合に使用する、待遇差の説明書を作成
等です。
②成果物を整理する
既に同一労働同一賃金のコンサルティングをされている社労士の先生が、①のコンサルティング手順で、成果物として作成しているものは下記です。
コンサルティング手順 | 成果物 |
同一労働同一賃金診断 | 同一労働同一賃金診断シート |
改善策の提案 | 同一賃金是正リスト給与シミュレーションレポート |
各種規定改定サポート | 就業規則 賃金規定 労働条件通知書 賃金の説明書 |
③コンサルティングを商品化する
同一労働同一賃金を商品化する上で、何をどこまでサポートするかというサービス内容を決め、それに応じた料金を設定することをおすすめします。
ここでは、商品化の例を3つご紹介します。
<アドバイザー顧問契約>
同一労働同一賃金対応の意志決定の手助け、相談助言等を個別に行います。
顧問契約という形で月額料金を設定しています。
アドバイザリー顧問契約の中は、5段階のプランがあり、定期打ち合わせの回数等、サポート内容によって金額を5段階に分けて設定しています。
<セミナー・研修>
セミナー研修等で多くの企業に向けて同時に対策の教示や助言・指導等を行います。
発生する費用は、セミナー研修受講料のみです。
<コンサルパッケージ>
定期的な打ち合わせや相談等のサポートではなく、必要な部分のみのサポートを定額で行います。例えば、①コンサルティング手順のⅲ各種規定サポートのみを、〇〇円で行う、といったものになります。
このような形で、サービス内容やコンサルティングのスタイルによって料金を設定し、商品化することで、サービス内容と料金を分かりやすくお客様にご提案することができます。
4 まとめ
中小企業の同一労働同一賃金対応には、待遇差の合理性の判断や、各種規定の改定・作成等、専門的な知識が必要です。そのため、同一労働同一賃金対応を社労士にサポートしてもらいたいという中小企業のニーズは、2021年4月に向けて確実に高まっていきます。
顧問先へのご提案はもちろんですが、同一労働同一賃金のご提案は、新たなお客様とのつながりを持つきっかけになり、今後の事務所経営を大きく飛躍させるチャンスです。ぜひ、今から準備を整え、積極的なアプローチを行いましょう。
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【執筆者:佐藤 百華】